月刊 不動産流通7に掲載!

2022.6.6




 

 

会社存続の危機も経験。
住宅困窮者への支援に注力

【父親に憧れて、不動産業の世界へ】

立川市を中心に多摩地域全域で賃貸仲介・管理、売買仲介等を展開する㈱HELLO’S(東京都立川市、代表取締役:萩生田 和法氏)。萩生田氏は中学卒業後、アルバイトを転々とする生活を送っていた。それを見かねた父・明男氏から「自分のやりたいことを決めて、会社を立ち上げてはどうか」と勧められ、不動産会社を設立しようと決意したという。「父は叔父が創業した不動産会社の社長を務めていました。幼い頃に不動産の仕事をする父の背中を見て、密かに憧れていたことを思い出し、起業するなら不動産会社しかないと思ったのです。」(同氏)

2007年に現在の会社を設立。明男氏の“付き人”となり実務を学び、10年に「日野」駅前に店舗を開設、本格的に業務をスタートした。

「店舗を設けてからしばらくは、近隣の賃貸オーナーのところへ『仲介を任せてもらいたい』と頼んで回り、契約できたら物件情報をホームページ(HP)に掲載する…という作業を繰り替えしていました」(同氏)。地道に仲介を行う中で、少しずつオーナーからの信頼を獲得、管理を受託できるケースも出てきた。スタッフを雇う余裕もでき。徐々に事業を拡大。15

年に2店舗目をオープンするなど、順調に事業を拡大させていった。

【店舗の増加が危機運ぶ。契約率が大幅減に】

店舗を増やしたことは、当初こそ会社の業績アップに寄与したが、「日野店と立川店で商圏が重なったことが災いし、顧客を取り合う羽目に…」(同氏)

営業スタッフ同士で喧嘩することが増え、接客は疎かに。来店からの契約率は約10%にまで落ち込み、売上減から「倒産」の2文字が脳裏に浮かぶこともあったという。何とか会社を立て直そうと日野店を畳むと共に、断腸の思いで人員整理、最悪の事態を免れた。

業績を回復させるには、競合他社との差別化策を考える必要がある。そこで主力の賃貸仲介において、初期費用を毎月の家賃に上乗せすることで入居時の負担を軽減するプランを用意。これが予想以上の反響を得て、徐々に業績が安定。再び人員を増強することも叶い、社内ににぎわいが戻った。

【「足を向けて寝られない」感謝の言葉が原動力に】

賃貸仲介業における差別化策の重要性を痛感した同氏は、ターゲット層を絞った仲介にも力を入れている。

その一つが生活保護受給者への仲介だ。「部屋探しには一定のハードルがありますが、競合他社が少ない分、ビジネスとして大きな可能性を秘めている。何より周辺地域の住宅困窮者への支援にもつながります」(同氏)

自社HPで生活保護受給者向けの情報を拡充し、顧客にアピール。一方オーナーには、顧客の人となりのほか、入居後にトラブルが起きても同社が責任を持って対応することを伝えて不安を払拭。これまで50件以上を成約している。

ビジネスという目的以上に、顧客からの感謝の言葉が同氏の原動力になっている。特に印象深いのは、数年前に来店した80歳代の女性。希望条件に合った部屋が見つからず約半年にわたって物件探しに奔走、何とか成約に漕ぎ着けた。「『萩生田さんには足を向けて寝られない』と。その言葉は今でも励みになってます」(同氏)こうした丁寧な対応が口コミ等で広がり、毎月数件は生活保護受給者から部屋探しの依頼が舞い込んでいるという。

また、「立川」駅周辺はキャバクラやスナック等の“夜の店”が多HPに「水商売の方へ」というバナーや専用ページを設けアピールしている。顧客に対応するのは、立川で“スナックのママ”をやっていたという異色の経歴の女性スタッフ。水商売で働く人たちは、華美な壁紙を好む、眺望の良い高層階を望むなど、住宅のスペックに独特のこだわりがあるケースが多いそう。同スタッフが和気あいあいと相談に乗りながら、できる限り希望にマッチした物件を探すようにしている。「入居審査が通らず苦戦することがありますが、労を厭わず丁寧に対応することで、口コミ等でも周辺地域での認知度を高めていきたい」(同氏)

今後は、HPのコンテンツ拡充にも取り組む。「スタッフによるコラムコーナーなど、物件情報にとどまらない情報発信に力を入れ、集客力のさらなる強化を図ります」(同氏)。

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